法律の効果におけるメディアの責任

緊急事態宣言が全国に発令されたわけだけれど、けっこう意味ない。

そもそも緊急事態宣言には個人の行動を制約する権限はないのだから、可能な最大の権限は公共交通機関を止めて実質的に移動の自由を制限する事だ。

これだって制限するのは企業の経済活動であって、結果的に移動の自由を制限する効果があったとしても、そうは言わない。仮に政府がJRの運営を停止するよう求めたとして、後にそれが人権補償の観点から憲法違反だとして訴訟を起こしても一定程度戦えるとさえ思う。だけど政府は今のところこの権限を行使していないので、まぁ考えたって仕方ない。

 

にもかかわらず、連日この緊急事態宣言についてメディアが取り上げ、やれどこの自治体の長がこんなことを言っているだとか、街頭で緊急事態宣言が出たことへの意見をインタビューしたり、号外が配られたりしている。

ある長は政府からより協力な権限を与えられたのでウンヌン、、、一般人はもっと早く宣言しても良かったとか感染拡大を防ぐためには仕方ないとか。

繰り返しになるけど緊急事態宣言の法的根拠となる新型インフルエンザ等措置法には特に拘束力があるわけじゃない。なので自治体の長は何の権限も与えられてないし、感染拡大を防ぐような機能も持っていない。今、あまり話題になっていない感染症法のほうがより強い権限をもっている。なにしろ72時間の外出禁止命令が出せる上に罰金も取れるのだから。1月の時点でコロナもこの感染症法が適用できるように改正されている。

 

全く権限のない緊急事態宣言にも関わらず、国民の行動は大きく変容しています。これはひとえにメディアの効果ではないかと思います。まず1つめに、政府や自治体の長もそのことを良く判っていて、緊急事態宣言の発令で物事が大きく変わるような言い方で会見を開いたりしていて意図的に実像と違う姿を見せようとしていて、それをそのまま放送するものだから民間でさえも政府の広報機関のいうになっている。専門家の人が出て来て解説したりするのだけど、これまで行使された事のない宣言の解説などできるわけがない。だって前例がないんだから、専門家って意味すらよくわからない。

第2に騒ぎ立てて取り上げることで、周囲との同調圧力が強まってしまい、半ば強制的に身動きの取れない状況を作り上げている点。経営者や会社員、学生や主婦など様々な人のインタビューを取っているけれど、不確定要素しかない今の状況でコメントを求めたって評価のしようがないはずです。経済活動は継続すべきだと主張する人がどのような根拠でウイルスのリスクより経済活動の支持するのかも見えないし、今の状況ではお店は営業を自粛するべきだと主張する人も生活の糧を失った人への補償をどのように考えているのかが見えてこない。そうゆう状況の中でコメントするという事は、なるべく断言せず、批判されない答えに集まってしまうことを意味します。僕だってそうする。スポーツ選手や芸能人など立場のある人のコメントは一層そうだし、番組側だってそうゆう作り方しかできないはずだ。

 

こうしてなんとなく一人一人が最善のポジショニングをとった結果、社会の傾向としては中間ではなく保守寄りになってしまうのは必然といえます。だからこそメディアにはその事を自覚していただき、保守に傾かないような番組の制作をしてもらいたいところだけど、あまり期待もできません。

ただ、本来は力のない法律を根拠にシビリアンコントロールが実現してしまう事の恐ろしさは知っておいてほしい。助長というか、メディア自体が産み出し、政府のプロパガンダのような役割を担ってしまっている事を十分に理解しておいてほしい。

第三として、戦争を連想させる政府の発表をそのまま報道することで民衆に戦時下にあるという気分を作ってしまっている点を最後に挙げておく。災害という表現もできた中で戦争と表現する事で民衆は判断材料をまた1つ奪われた。滑稽かもしれないが、戦争と災害を対比したりして、戦争のような状態は戦争状態とは違いますよとアナウンスして欲しいものです。